腰痛

腰痛は「姿勢」や「動作」、体の「ゆがみ」が原因

近年、IT技術の進歩は目覚ましく、パソコンやスマートフォンを使わずに生活する人はおりません。その一方で、「姿勢」や「動作」、「体のゆがみ」により腰痛に悩まされている方が爆発的に増えています。
腰痛の原因の約85%は検査をしても痛みの原因となるような異常が認められない腰痛といわれており、このような腰痛を「非特異的腰痛」と呼んでいます。
しかしながら、腰痛が悪化し整形外科にいくとレントゲンやMRIなどの検査の結果、「腰椎椎間板ヘルニア」や「腰部脊柱管狭窄症」と診断されることがあります。これは半分正解で半分不正解です。それは、画像所見ではヘルニアや狭窄症があっても、必ずしも痛みの原因がヘルニアや狭窄症ではないことがほとんどだからです。例えば、腰椎椎間板ヘルニアでは、画像検査によって椎間板の異常が見つかった人のうち、本当に椎間板ヘルニアが原因の腰痛はわずか3%で、残りの97%は椎間板ヘルニアが原因の腰痛ではありません。
非特異的腰痛は、腰への負担が引き金となって起こる(病気というほどではない)脊椎の不具合が要因で起きると考えられています。脊椎の不具合は、前かがみや猫背姿勢、腰を反らした状態、不適切な持ち上げ動作など、姿勢や繰り返しの動作が腰に負担をかけることで起こることがあります。前かがみ姿勢や猫背姿勢では、腰の筋肉や筋膜が慢性的に伸ばされ、椎間板の前方に負担がかかることによって腰や重だるさや痛みを生じます。
また、ハイヒールを履いて立ち続けるなど、腰を反らした状態が続くと、腰の筋肉や筋膜の持続的な収縮や椎間板の後方に負担がかかることによって、腰や首に痛みを生じることがあります。
当院では、「痛みの原因となっている姿勢や動作、ゆがみを評価し、正しい姿勢や動作がしやすいような体をつくる」治療をおこなっていきます。

ヒトの体は、頭から始まり、頚椎、胸椎、腰椎、骨盤、下肢から足の裏までつながっています。ヒトはある部位に痛みが発症した場合、その痛みの部位の負担を減らし、他の部位の負担を増やす(代償する)機能があります。
例えば、「腰痛は改善したが、今は肩・首が痛い」方がいらっしゃると思います。これは、腰痛が根本的に治ったわけではなく、無意識的に腰をかばうような姿勢に体をゆがませ、腰の負担を軽くしたために腰痛は改善したが、こんどは体のゆがみによって、首や肩に負担がかかり痛みがでてきた。といったパターンが想定されます。
また、「足首の捻挫後に、腰や臀部が痛む」方は、足の捻挫(靭帯損傷)によって足のゆるみなどの機能障害(痛みではありません)が残存しており、それを下肢(膝や股関節)や体幹で代償したため、症状が起こっていると想定されます。
つまり、今の痛みを発する部位と、痛みの根本的な原因(部位)が異なることが実は多いのです。
当院では、「痛みを発する部位の治療だけではなく、全身を診察しその痛みの原因となっている根本的な原因を突き止め治療する」治療方針を信念としております。

「上肢、下肢のしびれ」は本当に椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が原因?

積極的保存療法とは?

姿勢や繰り返しの動作により椎間板への物理的な負担が続くと、椎間板が後方に突出し神経を圧迫している画像を認めることがあります。これを椎間板ヘルニアといい、痛みだけではなく、上肢や下肢に痛みやしびれなどの神経症状を呈することがあります。神経は頚椎や腰椎から四肢の先端に向かって、筋肉や筋膜の間を走行していきます。神経症状がある場合、もちろん頚椎や腰椎のヘルニアが神経を圧迫している部位が症状の原因のこともありますが、神経が頚椎や腰椎から出た後の筋肉や筋膜を走行するレベルで圧迫や癒着により症状を発していることも多いのです。その場合は、首や腰だけではなく、四肢の神経や筋肉、筋膜へのアプローチも必要となります。具体的には神経ブロックやハイドロ(筋膜)リリース注射、リハビリテーションによる徒手療法や物理療法が必要となります。椎間板ヘルニアと診断され「痛み止めを内服して安静にして痛みが引くのをまっている」(これを従来の保存療法と言います)だけでは、痛みが改善しないだけではなく、仮に痛みが改善してもまた同じ姿勢や繰り返しの動作により痛みが再発したり、他の部位に負担がかかり新たな部位の痛みが発生します。当院では、ただ安静にしているのではなく、リハビリテーションを積極的に行い「痛みを改善させるだけではなく、再発や新たな部位の痛みの発生を予測し予防する」治療(積極的保存療法)をご提案いたします。
このようなお悩みがある方は、受診をおすすめします

こんなお悩みをもつ方におすすめです

    • 腰痛や肩こりで医療機関を受診したことがない
    • マッサージや接骨院に通ったが改善しない、もしくは効果が一時的である
    • 腰や肩の痛み(肩こり)やしびれの根本的な原因が知りたい、根本的な治療をしたい
    • 保険証を使ってリハビリやマッサージを受けたい

筋・筋膜性腰痛

腰の周囲には多くの筋肉が存在します。体の最も深部で、背骨と背骨をつないで脊椎や骨盤の安定に重要な役割を持つ筋肉を「ローカル筋」といいます。具体的には腹横筋や多裂筋があります。また、体の深層と表層の間には、背骨に直接付着しないで腰を動かす役割を持つ「グローバル筋」である脊柱起立筋が存在します。そして最も表層には広背筋と大殿筋、そしてそれらをつなぐ胸腰筋膜が存在します。筋・筋膜性腰痛は、体の深部の筋肉である「ローカル筋」の筋力低下または上手く使えていないため、表層の脊柱起立筋や広背筋、大殿筋、胸腰筋膜に急性または慢性的な負担がかかるため痛みがでます。
一概に筋・筋膜性腰痛といっても、どこ筋肉が傷んでいるか?を見極めることが重要です。レントゲンでは異常な所見を認めないため、身体診察やエコー検査が重要となります。エコー検査ではレントゲンでは見えないグローバル筋を描出することができ、痛みの原因となっている筋肉や筋膜が白く厚くなっている所見を認めることが多いです。その筋肉や筋膜をピンポイントで注射するエコーガイド下ハイドロリリース注射が効果的です。そして痛みをとった後に、リハビリテーションでローカル筋を鍛える治療法が効果的です。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎と腰椎の間にあるクッションを椎間板といいます。椎間板は中心にある髄核とその周りにある繊維輪でできていて、髄核の一部が繊維輪を破って出てくる状態を椎間板ヘルニアといいます。椎間板の後方には脊髄神経やそこからでる神経根が存在し、ヘルニアがそれらを圧迫すると、腰痛だけではなく下肢の痛みやしびれなどの神経症状をおこします。
診断には下肢伸展挙上テストやレントゲン検査などを行いますが、確定診断にはMRIでの精密検査が必要です。しかしながら、前述したようにMRI画像でヘルニアがあったとしても、必ずしも痛みがあるわけではないので、身体所見と合わせて総合的に診断する必要があります。
痛みが強い場合は、鎮痛剤やブロック注射、コルセットなどの装具療法で治療をおこない、椎間板に物理的な負担をかけている「姿勢」や「動作」、体の「ゆがみ」を診断し、リハビリテーションを行い椎間板にとってより良い環境を作ってあげることが重要です。このような積極的保存療法を行えばほとんどの方は手術をせずに治癒します。しかしながら、膀胱直腸障害(肛門周囲の感覚障害や、尿や便をコントロールする自律神経の障害)や下垂足(神経麻痺の悪化により足やつま先が上がらない)などの症状がおきた場合は手術が必要となる可能性があります。

詳しい腰椎椎間板ヘルニアについて

腰部脊柱管狭窄症

脊柱管は腰椎、椎間板、椎間関節、黄色靱帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。脊柱管狭窄症は加齢や慢性的な腰への負担により、椎間板の突出(ヘルニア)や腰椎や椎間関節から突出した骨(骨棘)、肥厚した靱帯などにより脊柱管内の神経が圧迫されている状態です。
症状は腰痛や下肢の痛みやしびれがありますが、特徴的な症状は歩行と休息を繰り返す間歇性跛行(かんけつせいはこう)です。進行すると、下肢の力が落ちたり、肛門周囲の感覚障害や尿の出がわるくなったり、逆に尿が漏れる事もあります。
診断はレントゲンでもある程度は推測できますが、より詳しく診断するためにはMRI検査が必要となります。
日常生活上の注意は、姿勢を正しく保つ事が大切です。神経の圧迫は腰をまっすぐに伸ばして立つと強くなり、前かがみになるとやわらぎますので、歩く時には杖をついたり、シルバーカーを押して腰を少しかがめるようにします。そうすると楽に歩けます。自転車こぎや水中ウォーキングなどのも痛みが起こりにくいので、よい運動になります。
手術ではない治療としてはリハビリテーション、コルセット、神経ブロックや鎮痛剤、脊髄の神経の血行を良くする薬などがあります。これらで症状が改善することもあります。
しかし、歩行障害が進行し、日常生活に支障が出てくる場合には手術を行うこともあります。また両足に症状が出ている場合には改善することが少ないので手術を行う場合が多いわけです。最近は内視鏡を使った低侵襲手術も行われています。

坐骨神経痛(梨状筋症候群)

坐骨神経は人体のなかでもっとも太く、長い末梢神経で、腰から足に向かって伸びています。坐骨神経痛は筋・筋膜性腰痛や腰椎椎間板ヘルニアといった病名ではなく、臀部や大腿後面の痛みやしびれの症状の総称です。坐骨神経痛の原因としては、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など腰椎レベルのものと、梨状筋症候群など臀部でのレベルのものに大別できます。梨状筋は骨盤の出口のところで仙骨と大腿骨大転子を結ぶ筋肉で股関節を外旋させる作用があります。坐骨神経は梨状筋の下を通っており、その梨状筋が硬くなり緊張してしまうことで、坐骨神経を圧迫して坐骨神経痛を引き起こします。特に股関節を内旋した際に、梨状筋が緊張し症状がおこりやすくなります。
診断はレントゲンやMRIも必要ですが、身体診察が最も重要です。Freiberg test(徒手的に股関節屈曲位で内旋強制し疼痛誘発するテスト)、仙骨を含めた骨盤のゆがみや、骨盤や大腿骨位置関係のずれ(求心性)、臀部の筋緊張や硬さなどの評価をする必要があります。
治療は梨状筋のストレッチがメインになりますが、硬膜外神経ブロックエコーガイド下ハイドロリリースで坐骨神経周囲の癒着をリリースするのも効果的です。

記事執筆者
院長 前田真吾

六本木整形外科・内科クリニック

院長 前田真吾

日本整形外科学会認定 専門医