ゴルフ肘・テニス肘

何かを握る動作・手首を曲げる動作をしたときに、肘にピリッと鋭い痛みが走ることはありませんか?その肘の痛みの原因は「ゴルフ肘・テニス肘」にあるかもしれません。

ゴルフ肘・テニス肘は「スポーツ障害*1」の一つですが、どちらもゴルフ・テニスの愛好者に限った疾患ではなく、手首をよく使う主婦の方やパソコンをよく使うデスクワークの方、重い荷物を持って運ぶ仕事の方にも発症する疾患です。
*1スポーツ障害:スポーツで同じ動作を繰り返し行うことで骨・筋肉・腱を使いすぎてしまい、慢性的な痛みが生じること

ゴルフ肘・テニス肘は、手首への「過剰負荷」加齢による筋肉・腱の「柔軟性低下」によって手首(手関節)と肘(肘関節)の間にある筋肉・腱に炎症が起こることで発症します。
肘関節の内側に付着している筋肉が炎症すると「ゴルフ肘」肘関節の外側に付着している筋肉が炎症すると「テニス肘」と呼ばれます。

ゴルフ肘・テニス肘の発症部位

(図)ゴルフ肘・テニス肘の発症部位 ※右手

ゴルフ肘・テニス肘の治療は「局所安静」を図りつつ、湿布や外用薬などの薬物療法、サポーター、ストレッチなどの「保存的治療」を行うことで症状の改善が期待できます。
しかし、保存的治療で改善せず日常生活に支障を来す場合には「手術」を検討することになります。

ゴルフ肘・テニス肘は速やかに適切な治療をすることにより、多くのケースで痛みの改善が期待できます。肘に痛みや違和感が現れたら、お気軽にご来院ください。

肘関節の構造

肘は肩から手首の中間地点にある関節です。肘関節は、上腕部(二の腕)にある「上腕骨」と前腕部にある橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)を繋ぐ役割をしています。

肘関節

(図)肘関節

また、手首(手関節)と肘(肘関節)の間にある、手根伸筋や手根屈筋と呼ばれる筋肉・腱の働きにより、腕の曲げ伸ばし・物を掴む、手を内側・外側に回すといった動作を自由に行うことができるようになっています。

ゴルフ肘・テニス肘になりやすい人

  • 中高年(40代~60代)
  • ゴルフやテニスを始めたばかり(久しぶりに再開した人を含む)
  • 週3回以上、ゴルフまたはテニスをしている
  • タオルを絞るなど手首を使う動作をよくする
  • 重いものを持ったり、引っ張ったりすることが多い
  • パソコン(タイピング・マウス)をよく使う
特に中高年の方でほかに一つ以上心当たりがある場合には、ゴルフ肘・テニス肘の発症リスクがありますので、肘の痛みなど症状がみられたときには速やかに検査を受けることをおすすめします。

ゴルフ肘の原因と症状

ゴルフ肘とは通称であり、医学的な病名は「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)」と呼びます。上腕骨内側上顆とは肘の内側にある出っ張った骨のことで、この部分には「手首を手のひら側に曲げる働きをする腱」と「手指で物を掴む働きをする腱」が付着しています。

手首を手のひら側に強く曲げたり掴んだりする動作を繰り返し行うことによる「過剰な負荷」や、加齢に伴う「腱の柔軟性の低下」が原因となって、上腕骨内側上顆に付着する腱が炎症を起こすことでゴルフ肘を発症します。

ゴルフ肘の症状は「肘の内側の痛み」で、手首を内側に回すとき握手など強く握ったときなどに現れます。
ゴルフ肘はゴルフのスイングの際、体をうまく使えず手の力だけで打つような初中級者に多くみられるほか、テニスのフォアハンドでも同じように手首への過剰負荷がかかり発症することがあります。
スポーツ以外でも、手首をよく使う主婦の方・重たいものを持ち上げたり引っ張ったりする仕事をされている方・パソコン(キーボード・マウス)を使ったデスクワークの方に発症しやすい病気です。

上腕骨内側上顆炎

(図)上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)

テニス肘の原因・症状

ゴルフ肘同様にテニス肘も通称であり、医学的な病名は「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」と呼びます。上腕骨外側上顆とは肘の外側にある出っ張った骨のことで、この部分には「手首を手の甲側に持ち上げる働きをする腱」と「手の指を伸ばす働きをする腱」が付着しています。

手首を反らす動作を繰り返し行うことによる「過剰な負荷」や、加齢に伴う「腱の柔軟性の低下」が原因となって、上腕骨外側上顆に付着する腱が炎症を起こすことで「テニス肘」を発症します。

テニス肘の症状は「肘の外側の痛み」で、物を掴んで持ち上げる、雑巾絞り、ペットボトルを開ける、草むしりのときなどに現れます。
テニスのバックハンドによる負担で発症することから名づけられましたが、スポーツ以外でもみられます。手首をよく使う主婦の方、重いフライパンを振る料理人や工事現場で交通整理をする方など肘に負担がかかる動作をする仕事の方、パソコン(キーボード・マウス)を使ったデスクワークの方に発症しやすい病気です。
また、最近はゲームや動画を見るなど長時間スマートフォンをいじっていることでも発症することがあるため、「スマホ肘」と呼ばれることもあります。

上腕骨外側上顆炎

(図)上腕骨外側上顆炎(テニス肘)

ゴルフ肘・テニス肘の検査・診断

問診・視診・触診

自覚症状のほか、肘を伸ばして圧痛(押したときに痛むこと)の有無を確認します。ゴルフ肘なら内側の骨、テニス肘なら外側の骨を押すと痛みます。

痛みの誘発テスト

ゴルフ肘が疑われる場合は、手首を手のひら側に曲げて力を入れる「手関節屈曲テスト」を行って、内側の肘に痛みが現れるかどうかを確認します。
テニス肘では、手首を反らしたり、上から物を掴んで持ち上げたりする「手関節伸展テスト(トムセンテスト)」「チェアテスト」「中指伸展テスト」を行って、外側の肘に痛みが現れるかどうかを確認します。

テニス肘の痛み誘発テスト

(画像引用)テニス肘の痛み誘発テスト|日本整形外科学会

エコー検査(超音波検査)・X線検査(レントゲン検査)

他疾患との鑑別のため、超音波検査レントゲン検査を行うことがあります。
レントゲン検査では、肘の内側・外側に骨棘(こつきょく≒とげ)を確認できることがあります。

ゴルフ肘・テニス肘の特徴的な症状があり、検査で他の疾患ではないと確認できれば、「ゴルフ肘」「テニス肘」と診断します。

ゴルフ肘・テニス肘の治療法

ゴルフ肘・テニス肘の治療では、できるだけ手首・肘を使わないよう安静にしつつ、痛みが落ち着いてきたら、筋肉強化のリハビリテーションを行うことが大切です。
治療法には、消炎鎮痛剤の服用や湿布・軟膏・注射などの薬物療法、温熱療法、手首・指のストレッチなどのリハビリ、肘用ベルトなどの装具療法といった保存的治療、手術、体外衝撃波治療(自由診療)などがあります。
基本的には手術以外の保存的治療から始め、患者様ごとに進行度や痛みの程度によって選択します。

当院では注射療法や装具療法・物理療法・マッサージや運動療法などの「理学療法(リハビリテーション)」に力を入れています。医師の指示のもと、国家資格を持った理学療法士が患者様の痛みの緩和・運動機能の回復をサポートします。さらに、当院では新しい治療法として注目されている「体外衝撃波治療」にも注力しています。(※自由診療)

保存的治療

ゴルフ肘・テニス肘の治療では、次のような保存的治療を行います。
  • 局所安静
  • 目的:手首への負担軽減
    ゴルフ肘・テニス肘の治療で一番大事なのが、「手首の安静」です。

  • 薬物療法
  • 目的:炎症や痛みを和らげる
    非ステロイド系消炎鎮痛剤(痛み止め)の内服・湿布を使用します。
    痛みが強いときには、ステロイド注射を行うことがあります。

  • 物理療法
  • 目的:痛みの緩和・血流改善・柔軟性を改善させる
    (急性期)アイシング(冷却)、(慢性期)温熱療法、電気刺激療法、光線療法(レーザー・赤外線)などにより、痛みを和らげ筋肉や腱を柔らかくします。

  • 運動療法
  • 目的:筋肉や腱を柔らかくして、肘への負担軽減を図る
    痛みの急性期を過ぎたら、肘の筋肉・腱のストレッチを行います。

  • 装具療法
  • 目的:腱の内側・外側上顆付着部への負担軽減を図り、炎症を抑える
    テーピングや肘用ベルト(エルボーバンド)などで、肘の負担を軽くします。
    なお、肘用ベルトは痛みのある骨の出っ張りに巻くのではなく、骨の出っ張りから指2本分ぐらい手のひら寄りの筋肉に巻きます。

    テニス肘ベルト装着

    (画像)テニス肘ベルト装着イメージ

手術(切除術・骨棘切除術など)

ゴルフ肘・テニス肘の多くは保存的治療によって症状の改善が期待できます。しかし、保存的治療を行っても改善せずに日常生活に支障を来している重症例では、手術(関節鏡視下滑膜切除術など)を検討することがあります。

関節鏡視下滑膜切除術では、痛みの主な原因となっている腱の付着部分を切り離します。手術は30分程度で行え、日帰り手術となります。ただし、効果には個人差があります。
また、骨棘によって痛みが発生している場合には、骨棘を切除する手術「骨棘切除術」を行うことがあります。
※手術の必要がある場合には、適宜近隣の対応病院をご紹介させていただきます。

体外衝撃波治療(自由診療:3000円)

当院ではゴルフ肘・テニス肘による痛みに対し、「体外衝撃波治療」を行っています。体外衝撃波治療は、元々「腎臓結石」を破砕する治療に利用されており、整形外科分野では疼痛疾患の除痛治療を目的に応用されました。

音速を超えて伝わる高出力の圧力波=衝撃波を患部(肘)に当てると、痛みを発する自由神経終末の減少や手根屈筋群・手根伸筋群の血流改善および組織の修復が促されるため、痛みの軽減効果が期待できます。ただし、体外衝撃波治療の効果には個人差があります。

体外衝撃波治療は外来通院での治療が可能であり、これまで重篤な副作用も確認されていないため、保存的治療と手術療法の間の「新しい治療法」として注目されています。

体外衝撃波治療器

(画像)体外衝撃波治療器

詳細はお問い合わせください。

当院での体外衝撃波治療の流れ

1.診察(体外衝撃波治療の適応かどうかの確認)

※予約制ではありませんが、ご予約いただけるとスムーズに治療できます。

2.圧痛点・超音波検査で照射部位(患部)の特定

3.照射(1回約5~10分)

  • 麻酔は不要です。
  • 椅子に座った状態で治療します。
  • 低レベルの出力から照射し、患者様の反応を確認しながら少しずつレベルを上げていきます。
  • 治療回数の目安は、1~2週間に1回×3週間(計3回)です。患者様の症状や効果により照射回数は前後します。
体外衝撃波治療

(画像)体外衝撃波治療の様子

体外衝撃波治療では患部に衝撃波を当てるため、治療中にチクチクするような痛みを感じることがありますが、患者さまの許容できる範囲内で出力を調整します。治療後1~2日ほど一時的に痛みが強く感じることもありますが、次第に軽くなります。
ただし、低出力の照射でも耐えられない場合には、治療を終了することがあります。

ゴルフ肘・テニス肘の予防

ゴルフ肘・テニス肘の予防には、日頃から手首・肘への負荷を減らして筋肉だけでなく関節周囲もほぐして柔らかく保つことが大切です。
次のような点を意識すると良いでしょう。
  • 肘の筋肉ストレッチを行う
  • お風呂上りや運動前後には、筋肉・腱のストレッチをして手首・肘にかかる負担を和らげるようにしましょう。1回あたりの回数よりも毎日継続することが重要です。

  • お風呂で温めて血行を良くする
  • 筋肉や腱膜が硬くなることを防ぎます。

また、ゴルフやテニスなどスポーツを行うときには、次のようなことに注意するとよいでしょう。
  • 運動前にはウォームアップ、運動後はストレッチやアイシングなどのアフターケアを必ず行う。
  • なお、ウォームアップやストレッチなどは、息を止めずに行いましょう。

  • 練習のやりすぎに注意する
  • やりすぎは筋肉・腱への過剰な負荷となり、ゴルフ肘・テニス肘の発症リスクを高めます。

  • 指導者に正しいフォームを指導してもらう
  • 痛みが改善しても誤った体の使い方でスポーツを続けることは、再発の原因に繋がります。

簡単セルフストレッチ・筋肉トレーニング

日頃から手首から肘にかけての前腕筋肉・腱の緊張をほぐして、柔らかくしておくことが予防に繋がります。ストレッチは、特に運動前後やお風呂上りにやると効果的です。
ただし、痛みがある急性期には行わないようにしましょう。
また、ストレッチ中やストレッチ後に痛みを感じるときは、無理に行わないようにしましょう。ストレッチ開始時期など詳細は、医師と相談してから行うと安心です。

ゴルフ肘予防

【前腕屈筋群ストレッチ】
肘の痛みがある方の手を伸ばします。目安:1回15秒×3セット
1.(右手の場合)右腕を伸ばして、手の甲を上向きにする

※肘は伸ばして、曲げないように注意

2.左手で右手を持ち、手の甲が体側に向くように手首を反らして引く

※前腕の内側(屈筋群)が伸びていることを感じましょう

前腕屈筋群ストレッチ

(画像)前腕屈筋群ストレッチ

テニス肘予防

【前腕伸筋群ストレッチ】
肘の痛みがある方の手を伸ばします。目安:1回15秒×3セット
1.(右手の場合)右腕を伸ばして、手の平を下向きにする

※肘は伸ばして、曲げないように注意

2.左手で右手を持ち、手の平が体側に向くように手首を曲げて引く

※前腕の外側(伸展筋)が伸びていることを感じましょう

3.手首を曲げた状態でさらに指も曲げる

※より伸筋群が伸びて効果的です

前腕伸筋群ストレッチ

(画像)前腕伸筋群ストレッチ

【前腕伸筋群の筋肉トレーニング】
肘に痛みがある方の手を伸ばす。目安:1回10秒×3セット
1.(右手の場合)右腕を伸ばして、手の平を下にして水を入れたペットボトル(500ml)または重り(1kgぐらいまで)を持つ

※肘を伸ばす

2.腕はそのままの高さで、ペットボトル(重り)をゆっくり持ち上げて手首を反らす

※5秒くらいかけて、ゆっくり反らす

3.逆にゆっくりペットボトル(重り)を下ろして、手首を曲げる

※5秒くらいかけて、ゆっくり曲げる