交通事故でのケガについて

東京都は日本の首都であり、人口も日本一です。そのため交通量も全国TOPクラスになります。交通量が多い、観光客が多い、土地勘のない他県の方も多いということもあり、交通事故は発生しやすくなっています。
東京は交通インフラが整備されており、交通の便が良いため人口に対しての交通事故発生数は比較的少ない傾向であり、全国4位となっています。交通事故での負傷者数は、年間で、約3万8千人の方が負傷されており決して少ない人数ではありません。どれだけ気を付けていたとしても,交通事故被害者になってしまう可能性は高いと言えます。

都道府県別事故発生件数

1位、愛知県
2位、大坂府
3位、福岡県
4位、東京都
5位、静岡県

出典:警察本部「平成29年中の交通事故の発生状況」2017年

交通事故被害で多いむちうち症

交通事故被害で多い症状で、むちうち症があります。このむちうち症は医学的な原因特定が難しく、自己申告の「痛み」の訴えのみになってしまう場合があります。

原因が不明確なまま自らの痛みの訴えのみで通院し続けることが気まずくなったり、忙しくて通院する時間がなったりで、通院をやめてしまう方がいらっしゃいますが、数ヶ月から数年経ってから症状が後遺症・後遺障害となって発現して、生涯、むちうち症の後遺症・後遺障害に悩まれる方が多くいらっしゃいます。

交通事故の被害者の方が、一日でも早く普段の生活に戻るためにも、交通事故によるむちうち症などのケガの発見と治療が重要です。

むちうち症とは

交通事故などで首に不自然な強い力が加わったことによる首の捻挫です。医学的には頚椎捻挫、外傷性頚部症候群とも呼ばれ、衝撃を受けた時に、鞭がしなるように首が動くので、むち打ちと呼ばれているそうです。医学的な診断名としては、頸椎捻挫や外傷性頚部症候群などになります。

このむち打ち症は、衝撃を受けた際に首の骨まわりの筋肉や神経が損傷することで以下のような様々な症状をもたらします。

・首の痛み
・肩、背中の凝り
・頭痛
・めまい
・吐き気
・足
・指先のマヒ
・だるさ(疲れやすい)

むちうち症は、交通事故で首がムチのように激しくしなる動きにより首の組織が傷つくことが原因とされます。事故当日は症状がないことが多く、数日後、長いときは翌月などから症状が出る、という場合もあります。
むちうち症になってすぐは痛みを抑えるために冷やしたり、湿布や痛み止めを用いて痛みを抑えますが、症状が重ければ首をコルセットなどで固定して数カ月間を過ごしていただく場合もあります。

その他の交通事故後の怪我リスク

主な症状

  • 腰や背中、腕などの上半身がつらい
  • 検査で異常がないのに症状がおさまらない
  • 関節可動域がせまくなる(身体の柔軟性減少、腕や足が上げづらいなど)
  • 自律神経症状に悩まされる(頭痛・だるさ・無気力・しびれ・めまい・食欲低下など)
  • 集中力が低下する(長時間の作業が苦手になる)
  • 痛む箇所が移動する(昨日は腰だったが、今日は首が痛む、など)
  • 夜間や明け方に症状が出る
  • 季節の変わり目や季節によって症状が出る
  • 雨の前や雨の時に症状が出る
  • 症状が消えたと思ったら、数日後にまた出現したりする
  • 運動すると痛みが増す
  • 身体の冷えや寒さに敏感になる
  • 姿勢によって痛い時がある
  • 疲れやすい

交通事故による怪我の治療

交通事故による怪我や痛みの原因については、検査をしても異常が見つからない場合が珍しくありません。にもかかわらず、ここまでご紹介してきたような自覚症状が現れるのです。

よってまずは痛みを中心に症状を取り除き、日常生活を送れる手助けをすることが大切です。

痛みに対する治療

湿布や痛み止めなどで症状にアプローチし、重症であれば神経ブロック注射という局所麻酔で神経が痛みを伝達することを妨げる注射を行う場合もあります。

痛みが取れてきたら、理学療法(リハビリテーション)でストレッチを行ったり、痛みを感じる部分を温め血流を促進して疼痛軽減を促す温熱療法などを行ったりもします。

その他、症状によりますが、首を不必要に動かして症状が悪化したりしないように保護するため、首にコルセットを装着していただく装具療法も行うことがあります。

治療期間の目安

交通事故後の治療の期間は交通事故の程度や個人によって差がありますので、明確な期間が決まっているわけではありませんが、目安としては2~3ヶ月、長い方では半年ほどになるかと思います。

交通事故後は、痛みがなくとも受診を

交通事故の被害者となった場合、警察への連絡はもちろんですが病院、とくに整形外科に行くことがとても大切です。交通事故の混乱や緊張から、体の痛みや不調に気づきにくくなっています。

痛みがないからと言って診察を受けないでいると、ケガの発見が遅れることになります。交通事故による後遺症になるリスクを少なくするためには、痛みがなくとも診察、検査をしておくことが大事です。また診察の際に、痛みや違和感、いつもと違う点や軽い症状でも細かく伝えて調べてもらうことが大切です。

交通事故によるケガは、外部から力が加わって起こる外傷や体や関節の不調が多く、これらの疾患は、整形外科の専門分野になります。

交通事故によるケガは、不意に衝撃を受けるため受け身が取れず、適切な治療をしないまま放置すると、複雑で重い症状になり、しかもなかなか治らなくなることが多いのが特徴で、完治する前にあきらめてしまう方も多くいらっしゃいます。こうした交通事故によるケガの治療は、早期の診察と治療の開始が、その後の生活へ与える悪い影響を最小化させます。

労災について

労働者災害補償保険(労災保険)では、労働者の方々が仕事(業務)や通勤が原因で負傷したり病気になった場合、原則として労災保険指定医療機関で無償で治療を受けることができます。

仕事中や通勤途中にケガをした場合は、健康保険を使うことはできません。「自分の不注意だったから」という理由から労災保険は使えないと誤解している人がいますが、業務とケガに因果関係がある場合は労災保険の適応範囲となります。また「通勤途中に転んだ」とかパートや派遣労働者であっても労災保険の適応となります。

詳しくは、所属の人事や総務などの部署にご確認ください。

労災保険適応なのに、健康保険を使用した場合は、健康保険へ医療費を返還してから労災保険へ請求するため一時的に全額自費扱いになる場合がありますので、ご注意してください。

記事執筆者
院長 前田真吾

六本木整形外科・内科クリニック

院長 前田真吾

日本整形外科学会認定 専門医